【タカラバイオ、遺伝子・細胞治療を担う大規模施設の新設とともに、CDMO事業拡大を目指す】

タカラバイオ

小間番号: B-14

近年、バイオ医薬品が医薬品市場に占める割合は上昇傾向にあり、その年平均成長率はおよそ10%と見込まれている。しかしながら、バイオ医薬品の製造には大型培養槽など大規模な設備投資が必要であり、製薬会社では新薬創出に資源を集中すべく、CDMO(医薬品受託開発製造企業)等、外部企業のリソースを積極的に活用する動きが高まっている。

タカラバイオでは、遺伝子・細胞治療などの臨床開発、商用生産といったCDMO事業を展開している。遺伝子・細胞治療のCDMO事業は現在のところ、市場規模としては低分子医薬や抗体医薬品分野よりも小さいが、今後の市場成長率ははるかに大きく、製薬企業やバイオ系スタートアップからの依頼が活発になっている。今後、遺伝子・細胞治療の市場は抗体医薬品市場の規模に近づいていくと捉えるタカラバイオでは、大規模なCDMO受託設備への投資など、CDMO事業のアップデートに取り組んでいる。

国内で設備投資と人材育成を続けてきた強み

日本国内でも、CDMO事業を掲げる企業は増加傾向にあり、異業種から参入する企業も多い。M&Aなどを通じての事業拡大であるケースが多く、それらは海外拠点や海外での技術を取り入れることで成り立っている。中には海外大手と比肩する事業規模に成長した企業もある。「バイオ医薬品」という大きな括りで見れば、製造拠点が国内および海外にあることでグローバルな供給が可能となるため、特にグローバル展開を考える製薬企業にとっては、海外での生産がメリットとなるケースもある。

タカラバイオが提供するCDMO事業は、バイオ医薬品の中でも「遺伝子・細胞治療」に重点を置いている。タカラバイオは40年ほど前からRNA分野の研究用試薬の製造・販売を行っているが、こうした背景もあり、遺伝子・細胞治療の研究開発にも国内では比較的早い時期から取り組んできた。新型コロナウイルスワクチンでも注目されたのがmRNAワクチンだが、これらの製造に関わる酵素類のニーズも今後高まっていくものと考えられている。

一方、CDMO事業の発展ためには、委託元となる企業側でのパイプラインの充実が不可欠だ。タカラバイオ広報・IR 部の河村啓氏は「かつての日本には、ウイルスベクターを使用する治療薬(遺伝子・細胞治療薬)の受託製造を行う企業はいなかった。それならば自社で製造工場を作ろうとなり、滋賀県内に大規模工場が設立された」と言う。その後2011年頃から日本国内でも遺伝子治療や細胞治療が注目されるようになった。

また、ウイルスベクターと違って国内で細胞を扱うビジネスを行うなら、病院など医療機関が相手であり、日本に開発・製造拠点を持つ必要がある。加えて、国内にバイオ医薬品や遺伝子・細胞治療薬等のプロセスを管理できる人材も求められる。

河村氏は「遺伝子治療薬をはじめとするバイオ医薬品の製造技術は、我々が独自で構築してきた。治験についても規制当局との話し合いを重ねながら、自分たちで長い期間をかけてノウハウを積み上げてきた自負がある。製造設備や人材も社内に揃ってきたことを機に、CDMO、遺伝子・細胞治療に積極的に取り組んでおり、先駆者としてのアドバンテージがある、と我々は認識している」と話す。

2027年に国内最大級のmRNAワクチン・部素材の製造施設が竣工

タカラバイオは、2000年代には、すでに遺伝子治療の治験薬製造にも取り組んでおり、滋賀県内に国内最大級の遺伝子・細胞治療のCDMO専用施設である遺伝子・細胞プロセッシングセンターを2棟保有し、3000Lクラスの浮遊細胞培養用のバイオリアクターや高精度なアイソレーター等を備え、商業生産規模にも耐えうる設備となっている。また、2027年には3号棟も竣工予定となっている。3号棟は、平時には自社事業としてmRNAと部素材の製造を行い、パンデミックなどの有事には国の要請等に応じてワクチンの製造供給を行う、いわゆる「デュアルユース」施設となる。

またタカラバイオでは、社内にいくつかの遺伝子・細胞治療に関する重要な製品を有している。たとえば「レトロネクチン」というタンパク質は、これ自体が治療薬ではないものの、遺伝子導入効率や細胞の活性が高まるという性質を持つ。医薬品の中には残らないが、遺伝子・細胞治療薬を製造する際に非常に重要な役割を担うタンパク質であり、この分野では非常に需要が高まっている。

BioJapanでは、ブース展示のほか、遺伝子・細胞治療に関するスポンサーセミナーとランチョンセミナーを開催。また、デュアルユース医薬品製造に関する主催者セミナーには、代表取締役社長の仲尾功一氏が登壇する。

ブースやセミナーでは、タカラバイオにおける事業の現状を伝えるとともに、今後のCDMO事業の展開等について講演し、細胞治療や遺伝子治療の開発・製造を幅広くサポートしたいとしている。

取材・文:GH株式会社 島田

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