【ファーメンステーション、独自の発酵アップサイクル技術による革新的なプラットフォームを展開】

タカラバイオ

小間番号: D-103

今や世界的な課題となっているフードロス。近年、こうした 未利用バイオマスに対する 利用法が各国で開発されており、バイオエタノールが注目を集めた。しかし日本国内においてコスト競争力のあるバイオエタノールの製造は難易度が高く 、海外からの安価な輸入品 が市場を占めつつある。その一方で、 フードロスや余剰 農作物だけではなく、人員不足で有効利用されない休耕田 も日本国内で広がっていると言われている。

こうした未利用バイオマスを「さらに価値の高いプロダクトに転換し、資源を循環・再生する こと」を目的として2009年に創業したスタートアップがファーメンステーションだ。長年にわたり培ってきた微生物ライブラリーや酵素ライブラリー、それらを繋げていくことで新しい価値を生み出すバイオものづくり技術が強みだ。

アップサイクルにストーリーをつけ る

フードロス、規格外農産物、副産物などの未利用バイオマスへ 新たな価値を吹き込む「アップサイクル」が注目されている。たとえば、余剰バナナを使ったバナナチップスへの転換や、余剰米からつくられたプラスチック樹脂原料などがすでに事業化されている。従来はこうした1つの素材から1つのモノをつくり出す、1対1での展開が一般的とされていた。しかしファーメンステーションは従来の1対1ではなく、多対多でのアップサイクルに取り組んでいる。

日本には、古来より「発酵」という技術がある。現在 の発酵工業では、 バイオマスを発酵させ 製品を 製造するところがあるが、発酵後の残渣は廃棄されているのが現状だ。ファーメンステーションが取り組むアップサイクルは発酵後に出される残渣も対象としており、 ゴミを出すことなく資源を再生・循環していくノウハウをプラットフォームとして展開している。

また、ファーメンステーションは現在、東京のほかに岩手県にも拠点を持つ。遠隔地に拠点を持つ理由は、岩手県内に広がる休耕田 を活用するためだ。休耕田を再生し栽培することにより得られた オーガニック玄米は、発酵させることでオーガニックエタノールを生成できるだけではなく、副生する発酵粕 は米もろみ粕エキスや 発酵エキスなど 、新しい価値のある化粧品原料へと展開している。再利用の過程でできた残渣は家畜のえさとなり、新たな地域ブランド(たまご)の創出へと繋がっていく。さらには家畜の糞を肥料にして食用米や野菜を育てるなど、米をスタートした未利用資源の循環にも成功している。

休耕田 は防犯面での課題や、地域・自治体としての課題を抱えており、これは岩手県に限ったことではない。休耕田 やフードロス の課題を解決するというストーリーを展開していくことで、単なるバイオものづくりではなく、最終的な出口である商品に繋げて消費者に訴えかけることができる点も強みであると、事業開発責任者の菅野雅皓氏は言う。

作りたい最終産物から逆算するプロセス開発が特徴

発酵という過程の中では、さまざまな微生物が働き、それを助けるさまざまな酵素が生み出されている。ファーメンステーションでは、こうした微生物や酵素をライブラリー化することで、さらなる価値を創出することを可能とした。バイオマス を適切な酵素で糖化することで 発酵しやすい状態とする ことや、最終的な発酵物をつくり出すために適切な微生物を選択していくことも可能となる。これが、ファーメンステーションが誇る「微生物および酵素のライブラリー活用によるカスタム開発サービス」だ。

菅野氏は、「例えば、リンゴ酒のカスという資源 が出発点の場合、一般的にはまず微生物をいろいろと当ててみて 、 その結果何ができるかというスクリーニング・ボトムアップ形式 のアプローチになることが一般的だ 。我々の強みは、酵素ライブラリーと微生物ライブラリーを活用して、特定の成分をゴールに定めてからプロセスを設計するところにある」と、ゴールから逆算するトップダウン形式が特徴だと述べる。

 

世界が取り組むバイオエタノール戦略に一石を投じるか

かつての日本でも広く取り組まれたバイオエタノールだが、 国産ではコスト面での問題もあり、安価な輸入品に頼らざるを得なくなっている。ファーメンステーションでは、今後こうしたバイオエタノールの開発にも二つの方向性から取り組むとしている。
まず一つはバイオエタノールそのものに価値を付加する取り組みである。日本国内ではエタノールを生成するためのバイオマスを数万トンレベルで安価に調達 することは容易ではない が、 日本国内製のバイオエタノールを各地で小規模に作ることで、スペシャリティ用途 のバイオエタノールとして製造・販売していく。
もう一つは、バイオエタノールのサプライチェーンの構築である。実際、日本国内の企業からもこうしたニーズがあり、新しい形でのバイオエタノール製造も視野に入れている。例えば世界にはまだまだ、バイオエタノールに適した未利用な資源が ある。これを利用し安価なバイオエタノールを製造すること が可能になると考えている 。

 

少ない資源にもまだまだ多くの利用価値はある

ファーメンステーションは、「これまでは廃棄されてきたもの」に「新たな価値を生み出す」企業である。BioJapanを機に、 未利用資源の有効活用のニーズを持つ食品メーカーや化粧品メーカー、天然由来やアップサイクル素材等のストーリー性が強い素材を戦略的に活用したい企業等との関係を広げ 、 新しいバイオものづくりを展開したいとしている。展示ブースでは、各種発酵バイオ素材のサンプルや、同社が独自に100種類のバイオマス糖化データを収集した、未利用バイオマスデータシート(2023年10月11日発売開始)のサンプルも展示し、発酵アップサイクルの広い適用可能性について訴求していく考えだ。

取材・文:GH株式会社 島田

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